令和元年(2019年)8月22日に首相官邸で開催された「第10回 中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループ」の資料が公表されました。

 

今回のワーキンググループでは、「大企業・親事業者の働き方改革による下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止のための総合対策(令和元年6月26日策定)」の進捗状況の報告などが行われています。

 

〔確認〕この対策は、大企業・親事業者の働き方改革の推進に当たって下請事業者に「しわ寄せ」が生じることを防ごうという対策で、具体的には、中小企業への時間外労働の上限規制適用開始(来年(2020年)4月)までの間に、「「しわ寄せ」改善事例等の収集と周知・広報」、「経営トップへの直接要請等」などを行うこととしています。

(来年度以降においても上記の取組を実施し、PDCAサイクルを着実に回す)

 

今回、公表された資料には、働き方改革推進支援センターに寄せられた相談事例を紹介するものもあります。

 

相談事例・生の声から見えてきた課題がまとめられていますが、これによると、「生産性の向上や人材確保のための支援策が十分に浸透していないという課題が見え、依然として「しわ寄せ」の問題も発生している」としています。

 

その中で取り上げられている「中小事業主が直面している課題」には、次のようなものがあります。

 

●時間外労働の上限規制について

・一部の職歴が長い従業員に責任のある業務が偏っており、新入社員に成長できる業務を割り当てることができてない。【宿泊・飲食サービス業】

 

●年次有給休暇の時季指定について

・個人毎の休暇管理表を新たに作成したが、現場のキーマンが不在だと生産が進まないという現実があり、非常に対応に困っている。【産業用ろ過装置製造業】

 

●人材確保・育成等について

・残業を減らすためには現場の無駄をなくし生産性を上げる必要があるが、それを実行できる人が工場にはいない。現場は人が足りないと嘆いている。【機械用刃物製造業】

 

●働き方改革に伴う「しわ寄せ」について

・元請の意向で現場を完全週休2日制にするよう求められているが、そのため、平日5日の作業が厳しくなっている。対策としての人材確保も難しい。【建設業】

 

問題点への対応としては、「多能工化、機械化・IT化、人材確保の支援」、「業界団体による働き方改革の取組を推進するための支援」などが示されています。

 

用意されている支援だけでは厳しいというのが中小事業主の皆様の本音かもしれませんが、支援策を活用しつつ、上限規制に対応すべく、工夫を凝らしていく必要があるといえそうです。